前回の記事から続きます。

 

地域に住み着いたノラ猫に不妊・去勢手術を行い、適切にお世話をしていく「地域猫活動」。全国に知られる地域猫ボランティア団体「NPO法人ねりまねこ」の講演をWeb版”としてまとめた第3回目(ラスト!)です。引き続き、元地域猫のカッパちゃんの写真とともに。「殺処分ゼロ」の裏にある猫をめぐるさまざまな問題と、これから地域猫活動を始めたい人がまずできることを、ねりまねこの亀山嘉代さんが解説します。

 

 

愛護センターへの引き取りは減っている一方で…

 

(以下、亀山嘉代さん)練馬区の登録ボランティアは、制度発足以降、ずっと増え続けています。現在の構成員数は188人。グループ数は63。活動地域数は141箇所です。練馬区内の地域猫として登録されている猫の数もどんどん増え続けて現在1500匹います。

 

一方、練馬区から東京都の動物愛護相談センターへ引き取られた数は減っています(引き取り数の推移:166頭(平成20年度)17頭(平成28年度)。東京都の小池都知事が「殺処分ゼロ」を目標に掲げていますので、今後もさらに減っていくでしょう。ただ実際は今住む小さな街周辺でも、私たちだけでノラ猫を500匹保護して譲渡しています。つまり、センターで殺処分をしない代わりに何らかの形でそれぞれの街の人たちが保護をしたり、里親探しをしたり、いろんな対策をしていることは、心に留めていただけたらと思います。

 

亀山さんの飼い猫のカッパちゃんも、もともとは練馬区に登録の地域猫

 

 

人とノラ猫が共生するために。現代の問題を知ろう

 

猫をめぐるさまざまな課題。飼育放棄は、街の中でたくさんあります。飼っていた高齢者がお亡くなりになったり、介護施設に入ってしまったり、お子様の方にお引越ししてしまうなどで最後までお世話ができなくなったときに、置き去りにされるケースは、街の中で非常に多いんです。経済的な理由で放棄されることもありますし、猫への虐待問題もいろいろと起きています。

 

よくテレビで取り上げられて昨今話題になっている「多頭飼育崩壊」をしてしまうケースもあります。昔みたいに放し飼いであれば、交通事故にあったり、病気になって自然と数が減っていた猫たちが、完全室内飼いで不妊・去勢手術をしないことで、周囲に気づかれないまま家の中で過剰繁殖してしまっているんです。

 

 

適切な管理で、人も猫も変わっていく

 

このような猫をめぐる課題を解決をしていくのにも、地域猫活動が効果を発揮しています。街の中に協力できる100人のネットワークができているので、地域社会を見守る姿勢ができているんです。みんなが無関心じゃないので、「あの家、すごい猫屋敷だよ」といった情報があぶり出されていく。大きなトラブルになる前に猫の譲渡先を見つけたり、早いうちから手をつけられます。置き去りになった猫たちの最終的なセーフティネットが、地域猫活動ということになります。

 

課題解決のためには、「ノラ猫」だけではなく「飼い猫」の適正な飼育も必要です。飼い猫の適正な飼育がされていないと、ノラ猫の“予備軍”になってしまうからです。「屋内で適正に飼育する」「不妊・去勢手術をする」「身元の表示をする」「最期を迎えるまで飼う」。この4つが大切です。

 

地域猫活動に興味を持った方ができることを、簡単なことから紹介します。まず自治体や地元のボランティアの猫対策を調べてみましょう。「練馬(自治体) 猫 ボランティア」みたいに検索をしますと、地元の愛護団体が出てくると思います。また近所の猫を観察したり、今回のような講演会に来ていただいたり。とくにお願いしたいのは、調べたことを雑談したり、SNSで発信してもらいたいんです。皆さんの働きかけが、社会を変える一助になります。そして適正な管理で猫を見守り、可能であれば、捕獲して不妊手術をする。ボランティアをお手伝いしたり、始めてみてもいいでしょう。また、猫を飼うときは、ペットショップで買わずにぜひ保護猫を迎えてください

 

適正な管理で、人も猫も変わる。私の飼い猫のカッパちゃんは、ある日庭にやって来たとても凶暴で怖い猫でした。地域猫になって穏やかな表情のカッパちゃんは、可愛いですよね。ノラ猫が嫌いな住民たちも、こんな穏やかな地域猫だったら許容できる。ノラ猫たちが嫌われないように街のみんなで変えていく。そうすれば、人と猫が共生できる社会を作っていけるのかなと思います。

 

地域猫時代のカッパちゃん。初期は警戒心が強く、ごはんをあげてもシャー!

 

 

時間をかけたお世話で、触らせてくれるようになりました

 

飼い猫になった現在。亀山さんとの触れ合いでこんなにいい顔!

 

 

 

 

本木文恵

カッパちゃんと地域猫の写真は、ねりまねこ提供

取材日:2018年7月21日

 

NPO法人ねりまねこ

亀山嘉代さん、亀山知弘さんの夫婦2人での活動。練馬区と協働の地域猫活動に加え、登録ボランティアのアドバイザーとして後進の育成、ネットや講演活動による地域猫活動の普及・啓発、保護・譲渡活動などを行っている。

*公式HP:https://nerimaneko.jimdo.com
*blog:『ねりまねこ・地域猫』https://ameblo.jp/nerimaneko/

 

★2018年8月16日(木)~20日(月)、京王百貨店で開催のイベント「みんなイヌ、みんなネコ」では、カッパちゃんの写真や、イラストレーターのさかざきちはるさんが描くカッパちゃんのパネル(sippo×『白黒さんいらっしゃい』コラボ)が展示されるそうです!

●主催:京王百貨店 ●場所:京王百貨店・新宿店(7階大催場)●日時:10時~20時 (※最終日は18時)